和歌山大会も、いよいよ今日が決勝戦。箕島高校対南部高校の対決です。今年の和歌山大会は、ベスト8がすべて公立高校。しかもその中に、分校が2校含まれていました。和歌山は、野球王国と言われています。それは智辯和歌山があるからではありません。参加39校中、20校が甲子園の土を踏んでいる県であるということです。おそらく、参加チームの半分を超える高校が甲子園に出ている県は、ないと思います。県予選、一回戦から、全試合テレビもラジオも完全生中継されています。わけのわからんアイドルよりも、県予選でベスト4まで行ったチームの中心選手のほうが、圧倒的に認知度が高いのです。その底辺の高さ、それこそが野球王国なのです。
都会では、公立高校が甲子園に出てくるのは、それこそ至難の業です。ただ、大阪の場合は、市岡高校という名門があり、北野高校、八尾高校、寝屋川高校、春日丘高校、三国ケ丘高校、渋谷高校などが夏の大会に出場していて、公立高校がしっかりとその地位を定着させています。兵庫県も、市神港、明石高校、県立芦屋、洲本高校、尼崎北高校、市立尼崎、姫路工業、社高校など、公立高校が甲子園に駒を進めています。
そんな中、東京が、公立高校が甲子園に出場するのが一番厳しいと言われていました。我々のころは、都立東大和高校の佐藤先生が、甲子園を目指して、チームを鍛え上げました。決勝に進出すること2度。結局甲子園には届きませんでしたが、佐藤先生の教え子たちが、「甲子園の心を求めて」をバイブルにして、今高校野球の指導者となって、その血は引き継がれています。
そして、33年前に、都立国立高校が甲子園を勝ち取りました。部員たちはみな、夏の予備校の講習会を申し込んでいたようです。市川投手がサイドから投げるくせ球。これに、当時全盛を誇った箕島高校も苦しめられました。その後、城東高校が2度、ショットバーのマスターをしていた監督の指導のもとで、ソフトボールが盛んな地域の子供たちが集まった雪谷高校が、智辯和歌山とよく似たユニフォームで甲子園にやってきました。
西東京大会準決勝で、国士舘高校に終盤に5点差を追いつかれた都立日野高校。国士舘も春は強いのですが、なかなか夏の大会は甲子園は遠い学校です。日野高校が、延長10回に3点を取って突き放しての決勝進出。いよいよ日大三高都の決勝戦を迎えます。準決勝での、この苦しい勝利が、決勝戦では生きてくると思います。選手のレベル、練習環境、何を取っても日本有数の学校に都立高校が挑みます。個人個人を比較してみれば、勝てる要素は乏しいかもわかりませんが、それが集団になったときに、個人の力を集めた以上も力が出てくることがあります。日野高校、がんばれ!都立高校の底力を見せてくれ。君たちの頑張りに、どれほど多くの人が勇気をもらい、「よし、俺も頑張ろう!」と言う気持ちになっていることか。乏しい予算の中、限られた練習環境で、創意工夫して決勝まで進む、まるで資源のない日本が、何とか努力をして世界の中で戦っている姿と重なってしまいます。ぜひ、日野高校には頑張ってもらいたい。いい試合をするのではなくて、圧倒的に打ちのめしてやる!そんな気持ちで臨んでもらいたいと思います。今日の試合、和歌山から楽しみにしています。