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Channel: KGセミナー塾長の日記
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受験に思う、母の愛

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 受験生は、誰でも合格通知を心から待っています。自分が予備校をしていて言うのもなんですが、学校の先生や、予備校の先生は、心のどこかに、「合格した」というレッテルを張ってその生徒を見てしまうところがどうしてもあるのです。そして、「合格」その言葉が大好きなのです。

 

 それが証拠に、たとえば、第一志望の私立大学に合格した生徒がいます。その生徒が、もう受験が終わっているのに、国公立大学に滑り止めで出願していたりすると、「出願した大学を最後まで受けないと。最後まで頑張る生徒がうちの高校の生徒です!」とか言ったり、何とか理由をつけたりして、受験をさせようとします。とにかく国公立の合格者の数を増やすことをまず第一に考えているのです。それならば、「国公立の数を増やすために協力してくれ!」と正直に言う方が、「良心的」かもしれません。地方の国公立に進むより、近くの私立大学に通学する方が経済的で、就職にも有利な場合があるのに、とにかく今は、「国公立に何人合格させたか」、それがすべてのようです。かつての学校とは違って、今は公立高校も明らかに企業の倫理で進んでいるような気がしてなりません。昔がいいというわけではありませんが、昔はもっと「色々な選択肢」があったような気がします。情報化の時代になって、余計に選択肢が狭まってしまったような気もするのです。

 

 大手予備校も、できる生徒は、明らかにできない生徒より、安い費用で1年間学ぶことができるようになっています。センター試験の得点と、模試の成績を見せれば、授業料が決まります。次年度の難関大学の合格者の数を1人でも多くしたい。そんな気持ちが授業料に反映されているのです。そんな制度を導入していないところを探すのが珍しいほどの時代です。スーパーで、自分が200円で買ったパンを、後ろの人が100円で買っていたら、誰でも腹が立ちます。ところが予備校の世界では、人によって授業料が違うのが、当たり前なのです。平気で人に腹を立たせるようなことをしているのに、一切とがめられることはありません。できる生徒の費用をせっせとできない生徒が支払っている不思議なところです。

 

 しかし、家族の気持ち。それは、本当に有難いものです。不合格通知が届くと、おばあちゃんが、孫のために、一生懸命に仏壇に手を合わしている家もあります。合格通知が届くまで、お酒を断っている父もいます。とりわけ、母の気持ち。その子供と一番長い時間を過ごしてきた象徴としての「母」の気持ちは、究極の無償の愛ですね。子供が一生懸命に努力する姿を一番近くで見てきた人だからこそ、自分の気持ちは無にして、子供のことを一番に考えるのです。ですから、子供が受験に行く、その前日に、「合格しようと、しようまいと、そんなことは関係ない。あなたが一生懸命に努力してきたのは、私が一番知っているから。頑張ってくれてありがとう。」こう言う気持ちに、母だからこそなれるのだと思います。

 

 しかし、難関校に合格した子供のことが大好きで、それが何よりの自慢の母も、最近はたまにいるのです。それだったらば、子供はまるでブランドのバッグと同じです。「あの鞄より、私のカバンの方がいい。ブランドは同じでも限定モデルだし!」と思うのと全く一緒ですね。もっといいバッグが出てきたら、今までの物には関心がなくなってしまうかもしれません。「合格通知が来なくても、思っていた所に合格できなくても、あなたは私の子供。頑張ってきたよ!ちゃんと見てきたからね。」という母の思いこそが、子供にとっての最後の砦になってやれるのです。それでこその母ではないかと思うのです。受験で結果が出ないのは、辛いことです。今までの人生の中で一番つらいかもしれません。しかし一番つらいのは、本人なのです。その時に支えてやれるのが、母なのです。教師の力なんて、たかが知れていると思うんです。客観的なことは言えるかもしれませんが、それは、やはり他人だからです。やっぱり、母だと思います。最後の砦は。そして、しっかりとした最後の砦がある子供は、幸せです。


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